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気候変動対策強化と持続可能な東アジア構築に向けた日中韓市民共同声明

現在、地球規模での気温上昇、海面上昇、海氷・氷河・永久凍土の減少、海洋の酸性化などが起き、世界中の陸域・海洋に影響を及ぼしている。その結果、干ばつ、農業生産量の低下、食料価格の増加などの悪影響が各地域で顕在化している。日中韓3か国においても温暖化による悪影響が顕著に見られるようになってきた。危険な気候変動を回避するために気温上昇を2℃未満に抑えることが世界共通の目標であり、そのためには世界全体の二酸化炭素の排出量を2010年比で40~70%削減し、2100年には排出をゼロもしくはそれ以下にすることが不可欠である。

本年11月30日からはじまる気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、気候変動による危機を回避するために、公平かつ野心的な削減目標をかかげた合意が目指されており、世界全体の温室効果ガス排出の約3分の1を占めている日中韓3か国の責任は極めて大きいと考える。したがって、私たち、日本、中国、韓国の市民は、持続可能な低炭素社会を確立していくために、COP21での意義ある合意に向け、次のことを政府、企業、市民社会などあらゆるセクターに呼びかけ、互いに協力・連帯して実現していくことを目指す。

【気候変動の主犯である石炭からの脱皮】

1. 気候安定化のための「2℃目標」達成には、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料の採掘・消費を抑えることが求められる。その意味で、現在の中国における石炭消費の減少傾向は非常に注目される。また、日本、韓国、中国による海外での石炭関連プロジェクトへの公的財源(または公的投資)の総額は世界の第1位から第3位を占めており、石炭事業に対する公的投資の中断のため、国際社会での役割が大きい。こうした分野からの公的資金引き上げも国際社会から求められている。したがって、私たちは、2015年9月25日に発表された米中両国首脳による気候変動問題に関する共同声明において、中国が国内外における高汚染・高炭素なプロジェクトに対する公的投資を抑制する方針を決めたことを強く歓迎する。そして、このような方針は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)やアジア開発銀行(ADB)、韓国輸出入銀行(K-Exim)、国際協力銀行(JBIC)など主な公的投資機関に対して確立されるべきである。すなわち、日本、韓国、中国はそれぞれ率先して持続可能な社会を目指し、国内外において石炭などの化石燃料から脱却するエネルギーシステムへの転換を求めていく。

【不適切な解決策ではなく、エネルギー効率化と再生可能エネルギーの拡大】

2. 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所による悲劇的な爆発事故により、今なお十数万人が故郷を奪われ避難生活を余儀なくされている。そして、大気、土地、河川や海が放射能に汚染され続けている。人類が二度とこのような事故を再び繰り返さないために最も確実な方法は、原発依存からの脱却である。また、原発は使用済み核燃料の放射性廃棄物の処理方法がいまだに確立しておらず、高汚染物質の蓄積という意味で数十万年にもわたって将来世代に大きなつけを残す。さらに、原子力発電の価格競争力は急速に低下しており、原発に依存しなくても野心的な温暖化対策が技術的・経済的に可能であることが最新のIPCC第5次評価報告書などでも示されている。したがって、東アジアにおいて、原発を気候変動問題の解決策とせず、エネルギー消費を最大限抑えるとともに、再生可能エネルギー100%に向けた社会を早期に実現する。

【平和と気候変動への対応に向けての東アジア協力】

3. 2015年は第二次世界大戦終結から70年を迎え、過去の歴史を改めて振り返り、改めて平和について深く考える重要な年でもある。気候変動による様々な影響は、食糧・エネルギー問題に直結し、紛争や難民発生のリスクを高める。そして戦争は最大の環境破壊である。このような認識のもと、東アジアにおける持続可能な社会を構築するためにも、日本・中国・韓国の市民が気候変動という共通の課題にともに取り組むことの意義は大きい。私たちは、政治的・感情的対立を乗り越えて、相互理解と交流・友好を深めることによって東アジアを平和な地域として永続させていく。